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2011年 12月 16日
無地で、木綿で、古いものを集めるのは、
けっこうたいへん。 でも、なるべくこうした素材からさき織りをしたいと思う。 捨てられるような運命のものをどう生かして織り上げようか、 考えるとワクワクしてしまう。 ちょっとくすんだような古い色たちを見ていたら、 いつかの大原の海を思い出した。 それは、私が通っていた学校恒例の写生旅行で、 大原という千葉の港町の好きな場所で絵を描くというもの。 私は、娘達を連れて日帰りで行ったんだった。 海の近くをうろうろして描きたい所を探して、 一日絵を描いた。 同じ学校の人たちがそこここで描いているのは、 心の底から自由な気分で。 娘達も同じように喜んでいてくれるのがうれしくて。 自分の絵は出来も悪く、何枚描いたか覚えていないくらいなのだけど、 長女の楽しそうな筆の動き、とか、 次女が自分の絵を説明するおしゃべりの声とか、 断片的な濃い記憶がまだ香る。 子どもたちが先に飽きちゃうと思っていたのに、 私のほうが先に燃料切れ。 もう暗くなるから帰ろうとせかさなきゃいけないくらいで、 「あと一枚」「もう一枚」と言いながら描いていた娘達がうらやましかった。 色のついた水の捨て場所はあまりないと予め注意があったので、 水を大事に描く。 なるべく同系色を同じところで洗うようにした。 そうしてできたのが、こんな古いような色たちだった。 バケツの中の色。 その日、自分が感じた色のいろいろ。 あの時、感じた自由な気分。 手や心を動かして、表現する発端みたいなもの。 意欲の源みたいにぐるぐるとしたもの。 絵を描き終えて、大原駅に着いたらもうまっくらで、 電車はやけにまぶしくて、銀河鉄道に乗って帰るような気分だった。 そのくらい遠い夢みたいな旅だったなあと思う。 古い布の古い色たちは、あのときのバケツの中の色に似ている。 他の人にとったら捨てちゃうようなものだけど、 そこにぐるぐるを感じる。 どうかいいものになりますように。
by saeko_nana
| 2011-12-16 20:43
| 織り
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